耳鍼の体重減少機序

財)東洋医学研究所、白石武昌先生の研究論文より
①単純性(食事性)肥満ラットの21日間耳鍼ダイエット実験(p783)

肥満ラットをつぎの三群に分ける。
  • 耳鍼群 :  ヒト耳甲介に相当する部分に皮内鍼を留鍼
  • パルス群:  同部位に経皮パルス刺激を週2回行う
  • 無処置群:  耳甲介以外の電気抵抗の高い部位(つまり効きそうにない部分)に週2回のパルス刺激。これはパルス刺激が耳点に効いているのか、それとも一般的な電気刺激として効いているかをみる為。

21日後、この三群の体重変化、血中レプチン濃度を見る。
結果

  • 耳鍼群   (体重)-26.0g    (レプチン) 31.9ng/ml
  • パルス群       -47.0g             30.7ng/ml
  • 無処置群      記載なし            36.0ng/ml

 無処置群の結果が書いていないので不明ですが、論文には「有意差が見られた」とあります。なぜ記載がないのでしょう。残念です。ここでは無処置群にあまり体重減少が無かったとしておきます。レプチンは脂肪細胞から分泌される、摂食抑制・代謝亢進の働きのあるホルモンで、血中濃度と体脂肪量、BMI値と相関するといわれています。だとすれば

  • 耳甲介への刺激は体重減少効果がある。
  • 減ったのは体脂肪である。
  • 皮内鍼の留鍼よりも週2回のパルス刺激の方が効く。
  • 不適当な部位への耳介パルス刺激は効果がない。
    ということです。

②偽耳鍼は効くのか?

 500人の非肥満者を無処置群と偽耳鍼群にわけ、18週後の体重の変化を見る。偽耳鍼群は、被験者には分からないように、皮内鍼を刺入後すぐに抜き、テープをはる。
結果

  • 無処置群 68.9kg → 67.0kg
  • 偽耳鍼群 69.2kg → 67.3kg

 両者に差は無かった。つまり無効な耳介刺激は効果がない、もしくは耳鍼で体重が減るのはプラシーボではいということです。


耳鍼に関するこれまでの研究展開

全日本鍼灸学会雑誌2006年56-5 p783-785